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筒井頼子さんが手掛けた絵本の中で、子供に読み聞かせをしたい選りすぐりの作品を紹介します。
筒井頼子さんはどんな人?
1945年、東京都生まれ。埼玉県立浦和西高等学校を卒業。宮城県在住。絵本には、「はじめてのおつかい」、「あさえとちいさいいもうと」などがある。1989年にエズラ・ジャック・キーツ賞新人作家賞を受賞。
筒井頼子さんの作品は、主人公の子供たちにそっと寄り添いながら、子供たちの不安や葛藤を経て、達成感を味わうまでの心の成長を丁寧に描いています。
特に、林明子さんとのコンビの作品は、林さんの優しい絵が、さらに物語の雰囲気を温かみのあるものにしています。
道路を行きかう大きなトラックや、高い塀垣など、子供の視線から描かれた世界は、子供たちの心を惹きつけるでしょう。
引っ越し、きょうだいの誕生、初めて体験するおつかいなど、成長の大きな節目に子供が立ち向かっていくたくましい姿が生き生きと表現されています。
筒井頼子のおすすめ絵本
1.【福音館書店】とんことり
【年齢】4歳頃から
【あらすじ】新しい町に引っ越してきたかなえは、郵便受けに「とん ことり」という音と共に届く花束や手紙から、新しい友達が出来る予感に、胸を躍らせる。
引っ越しの片づけで忙しい家族の横で、手持無沙汰なかなえは、「とん ことり」という音を聞きます。
郵便受けにすみれの花束が入っていて、送り主は誰だろうと気にしながら過ごすかなえに、更に、「とん ことり」と、たんぽぽや手紙が届き、自分への贈り物であると確信します。
「とん ことり」という音はささやかなもの音ですが、かなえにとっては、移り住んだ新しい町で新しい友達ができることへの、期待や希望を運んでくれる音です。
この音を、丁寧に、大切に心を込めて子供たちに読んであげてください。
きっと、かなえと新しい友達とが繋がる瞬間を感じて、素敵な予感に心を躍らせながらお話を楽しむでしょう。
2.【福音館書店】はじめてのおつかい
【年齢】4歳頃から
【あらすじ】みいちゃんが、転んでお金を落としたり、店で大きな声を出せず困ったりしながらも、無事に初めてのおつかいを成功させる。
誰もが経験する、初めてのおつかいの様子が描かれた作品です。
途中、転んでしまって、傷の痛みを我慢したり、勇気を出してお店の人を呼ぶみいちゃんの姿に、子供は感情移入して、お話に惹きこまれます。
最後のシーンで、無事におつかいを終え、お母さんの姿を見つけたみいちゃんの表情はうかがえず、うしろ姿だけが描かれています。
読み終えたら、表紙をもう一度見せてあげてください。
やり遂げた自信と、安心で心が満たされたみいちゃんの笑顔に出会えます。
それを見た子供も、みいちゃんの達成感に心を寄せ、自らの新しい挑戦への一歩に繋がる作品となるかもしれません。
3.【福音館書店】あさえとちいさいいもうと
【年齢】4歳頃から
【あらすじ】妹との留守番を頼まれたあさえ。夢中で絵を描いているうちに、妹の姿が見えなくなる。事故や誘拐の予感に不安になりながらも、心当たりの公園で、ようやく妹を見つける。
留守番を頼まれたあさえは、得意になって妹のあやちゃんと遊んであげようとします。
しかし、喜ばせようとしたあまり、夢中で絵を描いてあげていた隙に、よちよち歩きのあやちゃんを見失ってしまいます。
どこへ行ってしまったのだろうと不安になるあさえに心を重ね、子供もハラハラし、お話に聞き入ります。
キキーッという、自転車のぶつかる音が出てきます。
この後、少し間を空けて読み進めると、次の展開が気になる子供たちの気持ちをあおり、お話に躍動感が生まれるでしょう。
最後のシーンで、やっと見つけた妹を、安心感から思わず抱きしめるあさえの姿に、こちらもホッとして心が和みます。
4.【福音館書店】ながれぼしをひろいに
【年齢】4歳頃から
【あらすじ】みふでは、クリスマスイブに窓の外に見えた赤い流れ星を、プレゼントをくれるサンタさんへのお返しにしようと、拾いに出掛ける。風や枯れ草と会話したり、怖いカラスに出会ったりしながら山に入り、流れ星の正体を知る。
一人でお出かけをするドキドキ感いっぱいの作品です。
冬の夜に出会う猫や雪だるま、風や枯れ草たちと会話をする不思議な出来事にドキドキしながら、子供はお話に惹き込まれます。
また、雪の上を歩く音を「きくちく きくちく」と著したり、木についた雪を花に見立て、「かぁんとつめたいにおいがする」と表現するなど、情景の描写が印象的です。
赤い流れ星の正体は、実はサンタクロースでした。
透き通る目でほほ笑む、無口なサンタクロース。
子供たちは、それぞれに持つサンタクロースのイメージに、また一つ、違った一面を加える事でしょう。
クリスマスに向けて、読んであげたい絵本の一つです。
5.【福音館書店】そうちゃんはおこってるんだもん
【年齢】4歳頃から
【あらすじ】妹とばかり遊ぶお父さんに腹を立てたそうちゃんは、すねてテーブルの下に閉じこもる。出ていくきっかけを失ったそうちゃんだったが、お母さんの帰宅により心が和み、お父さんとの遊びを楽しむ。
下にきょうだいがいる子供に、おすすめの絵本です。
下の子に、大好きな両親の注目が行ってしまい、淋しさを感じる普段の自分の境遇と重ね合わせ、お話に聞き入ります。
すねて意地を張り、自分の感情の引っ込みがつかないでいるそうちゃんと、機嫌を直そうとあの手この手で奮闘するお父さんとの攻防戦が、この作品の見所です。
合間に入る、妹の無邪気な姿もまた、可愛らしくて心が和みます。
最後は出掛けていたお母さんの帰宅により、空気が一変します。
心の解放のきっかけを掴んだそうちゃんと、お父さんが思いっきり遊ぶ姿に、さらに深まった親子の絆を感じます。