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6月以降に保育所や学校で流行するアデノウィルス。
「ただの夏風邪」と考えて対応を誤ると、とても痛い目にあいます。
アデノウィルスの基礎知識とcawaiku編集部スタッフの実体験レポートを紹介します。
アデノウィルスによる感染症とは?
アデノウィルスは感染力が強く、幼稚園や学校などで集団感染することがあります。
また、アデノウィルスによる病気を発症した子供を看病していて、大人にうつってしまうこともあります。
アデノウィルスは「ウィルス性結膜炎」とよばれる病気を引き起こします。
まぶたの裏側にあたる「結膜」がウィルス感染によって炎症をおこし、「目の充血」、「大量の涙」、「目やに」、「目のかゆみ」などの症状がでます。
アデノウィルスにはいくつかの「型」があり、感染した「型」によって異なる症状を引き起こすため、その症状の特徴に合わせて、「はやり目」または「プール熱」という名称がついています。
1.はやり目
まず、「はやり目」と呼ばれる「流行性角結膜炎」は、アデノウィルス8型、37型、19型等に感染し、7~14日の潜伏期間を経てから発症します。
特徴的な症状として、激しい充血や、瞼の腫れ、大量の涙などがあり、2週間程度も症状が続きます。
目の充血がおさまる頃に、視力の低下を招く可能性がある黒目の濁りが現れます。
2.プール熱
また、「プール熱」と呼ばれる「咽頭結膜熱」はアデノウィルス4型、3型等に感染し、5~7日の潜伏期間を経てから発症します。
特徴的な症状として、目の充血、発熱、咽頭痛などがあり、2週間程度続きます。
特に、咽頭痛を伴う39度前後の高熱が5~7日程度続きます。
また、「はやり目」と同じく、目の充血がおさまる頃に黒目の濁りが現れます。
3.アデノウィルスの治療薬はない
残念ながら、アデノウィルスによる「ウィルス性結膜炎」を治療する薬はありません。
したがって、風邪と同じように症状を抑える薬を服用します。
目については、抗菌点眼薬とステロイド点眼薬を併用することで、視力が低下するような症状を抑制します。
またプール熱については、風邪と同じように、解熱剤や、細菌による2次感染を防ぐための抗生剤が処方されます。
アデノウィルスに感染した実体験レポート
cawaiku編集部のスタッフが子供の看病をきっかけにアデノウィルスに感染しました。
その体験レポートを紹介します。
1.軽い目の「かゆみ」から始まった
ある日、突然、目がかゆくなりました。
「目にゴミが入っただけ」と思い、水でよく洗いました。
しかし、2日間経過しても、快方に向かうどころか、涙がたくさん出て、目の痒みが強くなったため眼科を受診しました。
そして、眼科で、「”重傷度”の高い結膜炎です。」と言われたのです。
検査のため、瞼(まぶた)の裏を綿棒でこすられて、10分ほど待つと、再度、診察室に呼ばれました。
そこで「ウィルス性結膜炎」と診断されました。
医師からの説明としては、
というものでした。
しかし、この時、風邪のような症状が出る可能性があることは教えてくれませんでした。
もし、この時、何のウィルスで結膜炎になったのかを確認していれば、この後に訪れる高熱との戦いがもう少し楽になっていたかもしれません。
2.39度を超える高熱との戦い!
さて、眼科にいって、2日後の夜。
突然のくしゃみと鼻水に襲われました。この時は「風邪かな」と思ったのです。
さらに翌日の夜、猛烈な寒気に襲われ38度を超える熱と、のどの痛みが現れました。
自分としては、完全に「ただの風邪」だと思い込んでおり、一晩寝れば良くなるだろうと考えました。
そして翌朝は、37度前半の熱に下がっていたため、「やっぱりただの風邪で、1日休めば、夕方くらいには治る」と確信したのです。
なんと人は自分に都合よく考える動物なのでしょう・・・。
しかし、予想に反して、夕方になると熱が39度を超えて、喉の痛みが激しくなり、自然治癒に任せるのも辛くなったため、夜になって内科を受診しました。
内科では「風邪」と言われ、風邪の際によく処方される、カルボシステイン、シーサール、頓用の解熱剤としてカロナール、細菌による2次感染予防のために抗生物質が処方されました。
早速、高熱で辛かったため、処方された解熱剤を服用しました。
しかし、39度を少し下回る程度で、思ったほど熱が下がらなかったのです。
翌日も、38度後半の熱が続き、夕方になって39.5度になったため、再び頓用の解熱剤を使いました。
夜中の睡眠中も含めて、4回以上着替えるような大量の汗をかいたにも関わらず、朝起きると、まだ38度後半。
全く熱が下がる気配がなかったため、この時はじめて「ただの風邪じゃない!」と気づいたのです。
そこで、ネットで調べてみると、「アデノウィルス」の症状とよく似ているとわかりました。
さらに眼科を受診した際にもらったウィルス性結膜炎に関する冊子を精読してみると、やはり、ウィルス性結膜炎のひとつ、アデノウィルス4型または3型で発症する「プール熱」と同じ症状だったのです。
プール熱の主な症状は、目の充血と、発熱、咽頭痛(のどの痛み)です。
特に高熱が5~7日続くとされ、高熱が下がらない症状が同じだったのです。
もちろん、冊子を貰った時に、1度は目を通していました。しかし、その時は、目のかゆみだけだったので、プール熱だとは全く思いませんでした。
そもそもプールには入っていないですし、子供がプール熱に罹ったわけでもないので、プール熱を疑う理由がありません。
しかも、目の症状から発熱するまで3日以上の時間差があったため、同じウィルスによる症状だとは考えられなかったのです。
この時、すでに高熱が3日間続いており、体力が奪われて、倦怠感がひどく、さらに食欲もなくなるという状況になっていました。
3.強力な解熱剤を使ってやっと熱が下がる!
改めて内科を受診して、「アデノウィルスではないか?」と尋ねると、「その可能性がある」と言われました。
薬の処方をすべて変更し、特に解熱剤については頓用ではなく、毎食後服用するような処方になりました。
帰宅後、すぐに処方された解熱剤を飲むと、4時間ほどで37度近くに下がったのです。
1回目の内科でもらった解熱剤では、効果が弱くて効いていなかったのです。
熱が下がると、咽頭痛もほとんどなくなり、高熱で体が動かない状態も改善されました。
医師からは、熱が下がりきったら、解熱剤は服用しなくていいと言われていました。
そこで、2回だけ服用すると平熱まで下がったので、発熱の発生から4日目の朝となる3回目は服用しませんでした。
しかし、服用しなくなった途端、熱がみるみる上がり、元の39度に戻り、強い倦怠感に襲われました。
これが普通の風邪とは違うプール熱の恐ろしさです。
あわてて解熱剤を服用し、アデノウィルスによる発症であることを前提に、発熱から5~7日目まで服用し続けることにしたのです。
そして発熱から7日目に解熱剤の服用を完全に中止したところ、熱や咽頭痛の症状がでることはありませんでした。
ようやく治ったのです。
4.解熱剤で苦痛から解放される
アデノウィルスによる熱は風邪より高熱で、しかも何日も続くために体力の消耗が激しいのです。
さらに咽頭痛による炎症で、喉の一部が切れて、痰に血が混じることもありました。
それでも、私の場合は、解熱剤で熱さえ下げてしまえば、倦怠感も咽頭痛もなくなり、日常生活は全く問題ありませんでした。
もちろんアデノウィルスは感染力が強いので、薬で熱を一時的に下げたからと言って仕事や学校に行くことはできません。
いずれにしても、風邪だと思い込まず、目の痒みの後に熱が出たらアデノウィルスを疑って医師に相談しましょう。
(参考書籍)
医学書院「新看護学・母子看護」
金原出版「小児看護学」
小学館「家庭の医学大辞典」
学研「赤ちゃんの病気全百科」
ベネッセ「赤ちゃんの病気新百科」