目次
新生児に嘔吐と下痢の症状が顕れる時に疑われる主な病気を一覧で掲載しています。
また、赤ちゃんが嘔吐や下痢をしたときに自宅でケアをするやり方についても紹介します。
嘔吐と下痢の症状がある赤ちゃんの病気
嘔吐や下痢の症状がある場合には早めに医療機関を受診しましょう。
以下では嘔吐や下痢のある代表的な病気を紹介しています。
1.嘔吐の症状のみ
まず、新生児が授乳後に嘔吐をすることはよくあります。
食道と胃を閉鎖する筋肉である「噴門括約筋」が未発達であること、また、乳児の胃の形が大人と比べて食道に対して垂直型になっていることにより、胃に入ったミルクが逆流しやすいためです。
病気を原因として嘔吐をする場合には、ひとつにウィルスや細菌による胃腸の感染が疑われます。
この他、授乳後にダラダラと胃液やミルクを吐く場合には「胃食道逆流症」の可能性が、噴水のように嘔吐する場合には「幽門狭窄症」の可能性が考えられます。
2.下痢の症状のみ
下痢の症状が出る原因としては、主に3つのことが考えられます。
腸の感染症による下痢
ノロウィルスやサルモネラ菌などのウィルスや細菌に胃腸が感染して胃腸炎になってる場合に下痢を引き起こします。
腸以外の感染症による2次的な下痢
呼吸器や尿路など胃腸以外の内臓がウィルスに感染した結果にも、下痢が引き起こされることがあります。
感染症以外の原因による下痢
牛乳・母乳・大豆が主な原因物質とされる消化管アレルギーにより、下痢を起こすことがあります。
アレルギー以外では、風邪などで処方された抗生物質を飲んで、腸内酵素の活動が弱くなったときにも下痢になります。
3.嘔吐と下痢の症状がある病気
嘔吐と下痢が同時に起きた場合、主に考えられる原因を説明します。
風邪症候群
風邪は、37.5度以上の発熱や鼻水、咳の症状以外にも、下痢や嘔吐の症状があらわれることもあります。
また、風邪が長引いて細菌による2次感染の可能性がある場合には抗生物質が処方されることがあります。
抗生物質と共に整腸剤も処方されますが、抗生物質を服用すると、うんちが下痢気味になることがあります。
感染性胃腸炎
突然、嘔吐した後に38度近い熱が出て、嘔吐と下痢を繰り返す症状がでます。
感染性胃腸炎は、ノロウィルスやロタウィルスに代表されるウィルス性の胃腸炎と、サルモネラ菌や大腸菌に代表される細菌性の腸炎があります
ウィルス性胃腸炎は冬期、細菌性腸炎は夏期に感染することが多くなります。
感染性胃腸炎を発症すると、原因となったウィルスや細菌にもよりますがおおむね3~4日間は嘔吐と下痢を繰り返します。
嘔吐と下痢により脱水症になりやすいため水分補給がきわめて重要です。
消化管アレルギー
主に牛乳(粉ミルク)・母乳・大豆を原因する食物アレルギーです。
新生児でも発症するアレルギー疾患で、症状としては嘔吐と下痢のほかに血便の症状を伴うことが多いとされます。
また、十分に栄養を摂取できないため、赤ちゃんの体重が増えないこともあります。
母乳やミルクを与えるたびに、嘔吐、下痢、血便のいずれかを繰り返す場合には、アレルギーが疑われます。
市販の粉ミルクや母乳が原因であるため、特定のアレルゲンが含まれない治療用ミルクに切り替えることになります。
赤ちゃんが成長する過程で耐性を獲得するため、9割の患者が2歳前後で自然に治癒します。
なお、消化管アレルギーの発症率は1%にも満たないとされています。
嘔吐と下痢が同時に発生した時のホームケア
まずは、ただちに医療機関を受診して、病状に合った家庭でのケアの仕方について医師から指導を受けましょう。
以下では感染性胃腸炎になった子供を自宅でケアをするときの一般的な方法について紹介しています。
1.横向きに寝かせる
嘔吐物が気管に詰まって窒息することや、誤嚥よって肺炎になることがあります。
嘔吐が続いている間は、横向きに寝かせましょう。
2.水分を補給する
嘔吐や下痢が続き、十分な水分補給ができないと、脱水症になります。
脱水症は重症化すると意識障害を引き起こし命に関わりますので、こまめに水分補給することが非常に大切です。
もし、ミルクや経口保水液を飲ませても吐いてしまう場合には、胃を休ませる必要があります。
1時間程度の休憩をとってから水分を飲ませるようにします。
休憩後は、スプーンで1さじずつ飲ませ、嘔吐しないことを確認しながら少量ずつ水分を与えていきます。
3.ビニール手袋・マスクを着用する
例えば、感染の原因がノロウィルスであれば、非常に感染力が高く、一緒に暮らしている家族にも感染します。
そのため、嘔吐物・便がついた服やシーツなどを交換する際には、必ずビニール手袋とマスクを着用しましょう。
そして、ウィルスの消毒効果がある「次亜塩素酸ナトリウム」を含んだ消毒液を使って、服などを消毒してから洗濯しましょう。
子供がいる家庭では、感染性胃腸炎にかかりやすいため、「ハイター」ではなく簡単に扱えるスプレータイプの「次亜塩素酸ナトリウム」を常備しておきましょう。
4.赤ちゃんの体を清潔にする
嘔吐物や下痢が、皮膚に付着したままだと皮膚が赤く炎症してしまいまいます。
汚物がついた服やおむつはすぐに交換し、体をお湯で丁寧に洗い流しましょう。
この時もやはり、ビニール手袋とマスクはしっかり着用しましょう。
<参考出典>
医学書院「新看護学・母子看護」
金原出版「小児看護学」
小学館「家庭の医学大辞典」
学研「赤ちゃんの病気全百科」
ベネッセ「赤ちゃんの病気新百科」
新生児・乳児アレルギー疾患研究会
小泉重田小児科