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妊娠がわかり出産前に会社を退職した場合、果たして失業保険はもらえるのでしょうか?
また、退職後の雇用保険に関わる手続きはどうすればいいのでしょうか?
わかりやすく解説します。
出産を理由に退職しても失業保険はもらえない
失業保険には様々な種類の給付があります。
なんらかの事情で会社を辞めた場合に、次の再就職先が見つかるまで生活の保障となる失業保険は求職者給付と呼ばれています。
ひと口に「出産のために退職をする」と言っても様々なケースが考えられます。
2.もともと転職したいと思っていたので出産を契機に退職する
3.赤ちゃんができたら会社に残れないような雰囲気があるので退職する
しかし、出産前後の期間は、すぐに再就職をして働くことはできない状況であるため、いずれの場合にも求職者給付を受け取ることは出来ません。
あくまでも、求職者給付は失業をして今すぐに職に就きたくて探している人のため給付であり、妊娠や出産により「すぐに職に就くことができない人」には支給されないのです。
出産というやむを得ない事情で退職したのだから、すぐに失業保険をもらえると思っていた人も多いかもしれまぜんが、残念ながらそうではないのです。
ちなみに妊娠をきっかけに会社から退職を求められた場合は、明らかな法令違反であるため、ただちに最寄りのハローワークや労働基準監督署に相談しましょう。
なお、出産を理由にした解雇や退職勧奨は会社側も法令違反であると知っているため、「一身上の都合」として自らの意思で退職するような書面(退職届)を書くように迫ることがほとんどです。
退職の意思がないのであれば、絶対に退職届を書いてはいけません。
出産後に失業保険を受給するための条件
では、絶対に「求職者給付」が受け取れないかと言えばそうではありません。
妊娠を機に出産前に退職した場合には、次の条件をすべて満たせば出産後に失業保険を受け取ることができます。
1.雇用保険に加入していた
まず、求職者給付は雇用保険の制度ですから、雇用保険に加入していた事実が必須です。
条件としては「離職する以前の1年間の内6カ月以上加入している」必要があります。
すなわち離職前に6カ月以上会社で働いていたのであれば、受給する資格があるということです。
本来、求職者給付は離職以前の2年間の内12か月以上加入している必要があるのですが、妊娠・出産・育児が理由で離職した場合には、「特定理由離職者」に該当するため、資格要件が緩やかになっているのです。
2.就職活動をする
「求職者給付」は、あくまで就職をする意思のある失業者に対して給付する制度です。
したがって、まずはハローワークに行って求職の申込みを行い、就職活動を行わなければいけません。
しかし、再就職の意思があったとしても、現実には出産と育児のために就職活動をすることはしばらくできませんので、その間は求職者給付を受け取ることはできないのです。
出産と育児がひと段落して、就職活動ができるようになったら給付を受け取ることができるようになります。
3.受給期間内に就職活動を再開する
求職者給付は雇用されていた期間によって給付される日数(給付日数)が異なります。
給付日数1日ごとに日額が給付されます。(手続き上は4週間に1回まとめて給付される)
雇用期間 | 給付日数 |
---|---|
10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
しかし、失業中にいつでも給付がもらえるわけではありません。
受け取れる期間には限りがあり、原則として離職から1年以内に受け取る必要があります。これを受給期間と呼びます。
例えば、給付日数が90日間あるにも関わらず、離職して11か月後に求職活動を再開すると、残り1カ月間で受給期間が満了になるため、実際には30日間分しか給付されません。
つまり、求職者給付を満額受け取るためには、この受給期間の間に90日間以上の就職活動をしていなければならないのです。
実はこの受給期間は原則1年なのですが、実は妊娠・出産・育児が理由で退職した場合には延長することが可能なのです。
延長するためには離職後の約2か月以内に手続きを行う必要があります。
正確には「離職の日(働くことができなくなった日)の翌日から30日過ぎてから1か月以内」とされているので、例えば4月30日に退職した場合には、5月31日から6月30日までの間に手続きが必要です。
退職後すぐにやっておくべき雇用保険の手続き
では、妊娠・出産で退職した後に行うべき、失業保険を受け取るための手続きを解説します。
1.会社に離職票をお願いする
まず、退職するとき「離職票」を送付してもらうように必ず会社の担当者に伝えておきましょう。
大企業だとあまりないですが、零細企業の場合、担当者が「出産で退職=専業主婦になる」と思い込んで、離職票を交付する手続きを怠ってしまうかもしれないからです。
そして、退職をしたら1~2週間ほどで「離職票」が自宅に届きます。
2.ハローワークで受給期間を延長する
この「離職票」を持参して、最寄りのハローワークに行きましょう。
離職票以外に必要な物は以下のものです。
※ハローワークにより異なるため必ず地元のハローワークのHPを確認しましょう。
ハローワークで「受給期間延長申請書」を受け取って、必要事項を記入します。
そして離職票と共に提出するだけです。
その際、延長理由が事実であるかどうか母子手帳などで確認されます。
なお、延長できる期間は、原則の受給期間(1年)とあわせて最大4年間ですが、妊娠・出産・育児が延長の理由となる場合には、子供が3歳になるまでが延長期間となります。
なので、例えば給付日数が90日の人であれば、子供が3歳になる3か月前までには就職活動を再開させる必要があります。
3.就職活動を再開する
受給期間の延長が認められ、例えば子供が1歳前後になって保育所に預けて働きに出ようと思ったとします。
その場合にはハローワークに行って就職活動を再開すれば求職者給付を受け取ることができます。
手続きについては基本的に通常の失業手当の流れと一緒です。
ハローワークで「求職の申し込み」をすることで「受給資格(給付を受け取るための資格)」の認定が行われます。
2.講習会・説明会
仕事の探し方や給付の受け取り方などを教えてくれる説明会に参加する必要があります。
参加すると「雇用保険受給資格者証」という給付をもらうための証明書が配布されます。
3.求職活動
給付を受け取るためには会社面接に行くなど誠実に求職活動をしなくてはなりません。
4.失業認定
求職活動していても職が見つからない場合には、「雇用保険受給資格者証」を持参して4週間に1度ハローワークに行って「失業認定」を受ける必要があります。
認定されると、銀行口座に失業保険が振り込まれます。
<参考出典>
東京労働局