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片山健さんが手掛けた絵本の中で、子供に読み聞かせをしたい選りすぐりの作品を紹介します。
片山健さんはどんな人?
1940年、東京都生まれ。蔵野美術学校商業デザイン学科を卒業。「タンゲくん」で講談社出版文化賞、受賞。「おやすみなさいコッコさん」をはじめとする、コッコさんシリーズなど、作品多数。また、画集に「美しい日々」や「いる子ども」などがある。
片山健さんは、聞き取りやすい単調な文を繰り返している赤ちゃん向けの絵本や、自信、不安、安心感など心境の変化を描写する年長児向けの作品まで、幅広い年齢層に読んであげられる作品を、多く発表している作家さんです。
トンネルの中に入る真っ暗な場面があったり、ページの端にお尻だけ見せ、何の動物かと想像させたりと、ページの先に待つ展開を期待させる作風が子供の心を惹きつけます。
また、片山さんの絵も、絵本の魅力です。
白と黒だけの絵や、色鉛筆で描かれているような絵、そして水彩画。
どの作品をとっても、子供の表情、動物の感触、草や虫の様子が、臨場感たっぷりに描かれています。
片山健のおすすめ絵本
1.【福音館書店】いいな いいな
【あらすじ】ぷうちゃんが、動物たちとお互いの体のいいところを、「いいないいな」と褒めあいます。
犬の「もしゃもしゃ」な顔や、ぷうちゃんの「ぴかぴか」ほっぺなど、体の特徴を独特な擬音で表現しています。
子供の体を触って、ふれあい遊びをしながら読み進めると楽しいです。
「ぷうちゃん」のところを、子供の名前に読み替えて、読んであげると、お話を身近に感じ、子供たちは喜びます。
絵本には出てこないところもを「いいないいな」と褒めてあげると、子供の自信に繋がります。
ふれ合いながら、自尊心も育てるきっかけになりそうな作品です。
2.【福音館書店】おやすみなさいコッコさん
【あらすじ】夜になってみんなは寝ていますが、コッコさんだけは起きています。すると、おつきさまは魚や鳥などがねむったことをコッコさんに教えていきます。
おやすみ前の1冊に最適な絵本です。
「コッコはねむらないもん」と意地っ張りになって眠らないコッコさんに、おつきさまが優しく声をかけます。
眠るのを嫌がっていたコッコさんも次第に眠たくなっていく様子がとても可愛らしく、心がとても温かい気持ちになっていきます。
ママやパパが読むときには、少しずつ声のトーンをゆっくりにしていくことで、コッコさんと同じように、子供たちは眠たくなってくれるかもしれません。
シンプルな内容で難しいことを考える必要が一切ないので、きっと心が安らぐでしょう。
3.【福音館書店】とんねるをぬけると
【あらすじ】電車がトンネルに入り、出てくるたびに、乗客たちが、ゆきだるまやフクロウなどに変わっていく。
みんなで乗った電車がトンネルに入ります。
暗い中から出てくると、なんと体が雪だるまに変身しています。
トンネルを抜けた先に変わるのは、まわりの景色である、という思い込みを裏切られた子供は、大いに喜びます。
そして、次のトンネルを出たらどのようになるのだろうと、ワクワクしながら想像し、お話に聞き入ります。
トンネルに入り、抜けるという、単純なお話も、片山さんのユーモアが光り、小さな子どもから、年長児まで楽しめる作品です。
4.【福音館書店】もりのおばけ
【あらすじ】弟とのかけっこで負けまいと、薄暗い森に入ったぼく。心細くて、「おーい」と呼びかけたら、おばけが出てきて取り囲まれてしまう。恐怖の中、木の陰で隠れていると、追いかけてきた弟に会う事ができ、安心して帰路につく。
「ぼく」が、かけっこで、弟を突き放そうと、勇んで入った森の中の出来事です。
弟よりも速く走れるんだという、自信に満ち溢れた気持ちや、薄暗い森でおばけとの遭遇した不安や恐怖。
そして、追いかけてきた弟に会えた時の安心感と、子供は「ぼく」の心境の変化に感情移入し、お話に引き込まれます。
また、普段の生活ではあまり体感する事のない薄暗い世界を、白と黒で描かれた絵が子供たちに色々な想像をもたらします。
木のうろや、暗闇に光る二つの点は、子供の目にはどんな様子で映るのでしょうか。
5.【福音館書店】おなかのすくさんぽ
【あらすじ】「ぼく」がクマやいのしし、やまねこなどの動物と、泥遊びや山登り、水遊びをしてお散歩をするうちに、お腹がすき、帰っていく。
ぼくが動物たちと繰り広げる、元気いっぱいのお散歩の様子が、生き生きと描かれています。
土の穴に埋まったり、川遊びや山登りをします。
中でも、洞窟を探検するシーンがおすすめです。
暗く物々しい雰囲気から、洞窟を抜けた時の開放感あふれる場面転換が、とても気持ちがいいです。
このシーンのセリフを動物のように「ワーオ」「ブギャー」と思いっきり吠えるように読んであげると、子供たちにもその爽快感が伝わり喜んでくれます。
また、お腹がすいたクマが、ぼくを「おいしそうだ」と、舐めたり噛んだりする場面は、食べられてしまうのではないかと、少しドキドキします。
思いっきり遊んで、お腹がすいたから家に帰るというシンプルな内容ですが、散歩のワクワクやドキドキが詰まった楽しい作品です。