富安陽子の絵本~読み聞かせにおすすめの5冊~

富安陽子さんが手掛けた絵本の中で、子供に読み聞かせをしたい選りすぐりの作品を紹介します。

富安陽子はどんな人?

【プロフィール】
1959年、東京都生まれ。和光大学人文学部を卒業。「クヌギ林のザワザワ荘」で日本児童文学者協会新人賞、小学館文学賞受賞。「小さなスズナ姫」シリーズで新美南吉児童文学賞、「空につづく神話」で産経児童出版文化賞を受賞。「盆まねき」で野間児童文芸賞受賞。

富安陽子さんは児童文学の作家です。

作品には、日本の昔話には欠かせないお馴染みのキャラクターが登場します。

かっぱ、りゅう、おに、やまんばなど。

怖そうなイメージを持たれることが多い彼らですが、富安陽子さんは可愛らしく、親しみやすく表現するのが持ち味です。

代表作である「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズでは、主人公の少女「まゆ」が、ちいさなりゅうと大仕事を成し遂げたり、かっぱとお相撲を取って力比べをしたりしながら、心を通わせます。

そんなやり取りを見ていると、これまでの怖いイメージは覆されてしまいます。

また、作者が大阪府に在住していることから、関西弁を用いた作品にも定評があります。

語尾に「○○やで」、「○○やんか」などが入るだけで、まるでお話が魔法にかかったように、愉快に聞こえてくるから不思議ですね。

富安陽子のおすすめ絵本

1.【福音館書店】オニのサラリーマン


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【絵】大島妙子
【年齢】3歳頃から
【あらすじ】地獄勤めのサラリーマン、オニジマ。妻と子供に見送られ、出勤する。いつものように地獄の監視の仕事をこなすが、居眠りをして、トラブルを起こし、上司の閻魔大王にお叱りを受けてしまう。

この作品には、人間の世界さながらのオニ社会が広がっています。

バス停で待っているオニ達のうわさ話や、ロッカールームでの仕事の愚痴など、オニたちの会話は、人間世界でも隣から聞こえてきそうな内容ばかりです。

また、仕事で失敗して落ち込んだオンジマが立ち寄った飲み屋さんで、優しくこんにゃくをサービスされるやり取りは、実に人情に溢れています。

関西弁のテンポも相まって、読み聞かせているこちらが笑ってしまいます。

子供たちは、オニのお父さんと自分のお父さんとを重ね合わせて読み取るようで、「お仕事がんばってるかな?」とか、「今日失敗したから、帰ってくるのが遅いのかもね」などと、労うような言葉を話すこともあります。

絵本を通じて、お父さんの日ごろの頑張りが伝わるなんて、面白いですね。

お母さんが楽しみながら読めるこの作品は、自然と子供も笑顔になれます。

2.【福音館書店】まゆとりゅう


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【絵】降矢なな
【年齢】3歳頃から
【あらすじ】まだ雪の残る春のはじまり。やまんばのお母さんと、その娘「まゆ」が、用意したヤマモモのお酒を奉げ、空から龍の親子を呼ぶ。その龍に乗り、雲を起こし、大雨を降らせて、雪をとかし、里に春を呼ぶ「おしごと」をする。

はじめ、やまんばのお母さんは、これから起こることを、まゆには内緒にしています。

「おきゃくさまがくるよ」と言われて、ワクワクしながらおめかしをしたり、雲行きが怪しくなった空からは、何がやってくるのかと、ソワソワしながら待つまゆに、子供たちは自分の心を重ねて、どんどん絵本の世界に引き込まれていくでしょう。

龍の大きさを表現する「ドン ゴロン ゴロン ドドン ゴロン」というフレーズが何回か出てきます。

この勇ましい鳴き声を、思いっきり迫力を込めて読むと、絵本がもっと盛り上がると思います。

大迫力で進んできたお話も、最後に出てくる大きな虹によって、心を落ち着かせてくれます。

話の展開にメリハリがあり、読み聞かせていても楽しい作品です。

3.【福音館書店】まゆとかっぱ


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【絵】降矢なな
【年齢】4歳頃から
【あらすじ】やまんばの娘まゆは、大岩をも吹っ飛ばしてしまうほど。それを知った、力自慢のおおかっぱは、勇んで相撲を取るも、まゆが楽々勝ってしまう。まゆはかっぱたちに、その強さを大いに称えられ、友情の証をもらう。

このお話の一番の盛り上がりは、おおかっぱとの相撲のシーンです。

普段、相撲の取り組みを見たことのない子供たちには、行司の独特の言い回しに興味を惹かれるようです。

「ひがあし、デッカマルー」「にいしい、まゆのやまあ」と、行司になりきって読んであげてください。

そのあとにも出てくる、「はっけよーい」や、「のこった のこった のこった」ももちろん同様に。

この絵本を読んだ後、子供たちが見せるお相撲には、行司という役が登場し、ますます取り組みが盛り上がります。

4.【福音館書店】あのくも なあに?


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【絵】山村浩二
【年齢】2歳頃から
【あらすじ】さまざまな雲の形を、てんぐの座布団や、風の子のリボンなどに例えて、想像を膨らませる。「あのくもなあに?」から始まり、「そうかもね。」と答える、会話形式で進んでいくお話。

このお話には、色んな形の雲が出てきます。

そのたびに「あのくもなあに?」と問いかけていますます。

ここで、少し間を置くと、子供たちは、自分の想像を教えてくれて、楽しいですよ。

ダンスをしている風の子の髪のリボンというような穏やかな印象の雲もあれば、龍に例えた少し怖いような印象の雲も出てきます。

ですが、最後の雲は、お母さんの洗濯という、身近でホッとするような事象に例えていて、子供たちに安心を与えてくれます。

会話の終わりに、「そうかもね。」と、肯定も否定もしない、発想の自由さを認めているところが、とても印象的です。

お散歩の途中や、お出かけした先で、空を見上げる際には、「あのくもなあに?」といった会話が増えそうです。

5.【理論社】やまんばあかちゃん


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【絵】大島妙子
【年齢】4歳頃から
【あらすじ】岩から生まれたやまんばちゃんが、いのししやさるなどの森の動物たちに、それぞれの得意技を教わりながら成長していくお話。

富士山の噴火で飛んできた大岩から赤ちゃんが生まれる、という、奇想天外な物語の始まりに、子供たちはワクワクして大喜びします。

お母さんがいなくても、森の動物たちが里親になってくれて、自分の特性を生かした得意技を教えていくのですが、その呑み込みの早いこと早いこと。

いのししの、「とっしん・ドーン」は、全速力で突進し、相手にドーンと体当たりを食らわせるのですが、やまんばちゃんの場合は、フルスピードのハイハイでマスターします。

この様子に、子供たちは大笑いです。

この後も、猿からは木の枝から枝へ飛び移る「ゆさゆさ・ビューン」を、カワセミからは魚を捕る「ヒュー・バシャン・パクリ」を、教わります。

その動物の特性が生きた、インパクトのある名前の得意技が、子供たちの心をつかむようです。

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