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村上康成さんが手掛けた絵本の中で、子供に読み聞かせをしたい選りすぐりの作品を紹介します。
村上康成はどんな人?
1955年、岐阜県生まれ。岐阜県立恵那高等学校卒業。1986、88、89年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、1991年にプラチスラバ世界絵本原画ビエンナーレで金牌、「なつのいけ」で、第8回日本絵本大賞を受賞。
村上康成さんは絵本作家です。
村上さんは、自身の釣り好きから「水ぎわ族」と称する、自然派アーティスト。
創作絵本やワイルドライフアートなどで、独自の世界を幅広く展開しています。
そんな村上さんから生み出される作品には、豊かな大自然への愛を感じ取ることができます。
決して、たくさんの言葉を使っているわけではありません。
目には見えない「何か」の気配を感じさせる「ガサゴソガサゴソ」といった擬態語や、海の寄せては返す波の音の「ザザーン」という擬音語などの使い方が印象的です。
語られる言葉は少ないながらも、残された余韻の中に、惹きつけられるものがあります。
さぁあなたも、作品の中の大自然に、身を委ねてみませんか。
村上康成のおすすめ絵本
1.【フレーベル館】よぞらのほしは
【あらすじ】星がきれいな冬の森で、動物たちの息づかいが、白い息と共に、ほっほっ、ひっひっと聞こえてくる。
冬の寒さが、楽しくなる絵本です。
舞台は、ひんやりした空気の流れる寒い夜の森。
動物たちから繰り出される、色んな「はひふへほ」が聞こえてきます。
ふくろうさんの「ほっほっ」、ねずみさんの「ひっひっ」。
動物たちが追いかけられたり、逃げ回ったり、安心したりする感情をのせて読むと、お話に躍動感が生まれてきます。
動物たちの口から出る白い息。
寒い日には、子供たちと外へ出て、色んな息の出し方をしてまねっこしてみるのも、たのしいですね。
2.【徳間書店】山のおふろ
【あらすじ】山へ散歩に出かけた兄妹。二人が助けたトガリネズミについていくと、なんと動物たちが、お風呂に入っていた。
山の中を散歩中の兄妹に起こる、ファンタジックなお話です。
トガリネズミが、雪の中で動けなくなっているところを、二人は優しさと、手の温もりで助けてあげます。
子供たちは兄妹の気持ちと一緒になって、祈るような気持ちで小さな命の行く末を見守り、お話に惹き込まれます。
元気になったトガリネズミを追っていくと、何やら不思議な光景が広がります。
このあと出てくる見開きの仕掛けに向けて、ここでページをめくるスピードを落とし、言葉に余韻を持たせながら読むと、子供たちの次の転換への期待感を誘う事ができるでしょう。
動物の、耳や角が、少しだけ見えています。
「これ、なんだろうね」と、問いかけながら読んでも楽しいです。
そして折りたたみの仕掛けをめくると、何とも幸せそうな表情でお風呂に浸かっている動物たちが現れます。
命を救ったやさしい兄妹に、とてもあたたかなお返しが待っているのでした。
3.【フレーベル館】なつはひるね
【あらすじ】南の島の海辺の、ある日の昼下がり。波、空、雨などの様子を描く。
ゆったりとした空気が流れる、南の島の昼下がりが舞台です。
村上さんが描くシンプルな絵の中に、楽しいオノマトペが散りばめられている作品です。
寄せては返す波をザザーンサラサラ、青い空に浮かぶ大きな雲の広がりを、グングンモクモクなど、まるで海や空が生きているように表現しています。
子供たちも、まるで海にいるような感覚になりますね。
ゆっくり、ゆったり、パパやママもリラックスして読んであげるとよいでしょう。
そして、子供たちにもぜひ、オノマトペを表現してもらいましょう。
雨の音、風の音は、どんなふうに聞こえているのでしょうか。
絵本を読み終わった後の、お楽しみですね。
4.【復刊ドットコム】ふうた さかなつり
【あらすじ】魚釣りが大好きなふうたは、釣った魚を欲しがるいたちに、魚をあげる。次の日、いたちはお礼を伝え、今度は一緒に魚釣りをする。
魚を、絶対にあげない!と、意地を張るふうたですが、諦めて去ろうとするいたちくんを「しかたないなぁ」と呼びとめ、魚をあげる事にします。
淋しさを感じ、ふうたの意地っ張りな心がほどける瞬間が、とても可愛い作品です。
次の日、ふうたを待っていたのは、いたちくんの温かなお礼でした。
こんな光景は、子供たちによく見受けられる、おもちゃの取り合いの場面にとてもよく似ています。
本当は一緒に遊びたい気持ちを隠し、つい意地を張ってしまうんですよね。
しかし、「どうぞ」、「ありがとう」というやりとりの後には、楽しい気持ちが交わるという、温かなギフトが待っているのです。
手放す勇気から発展し、それを上回るものが手に入る豊かさを教えてあげられる、おすすめの絵本です。
5.【徳間書店】ようこそ森へ
【あらすじ】森の野鳥であるカケスが、キャンプにやってきた家族の、川遊びや焚き火をするところを見下ろしながら、魚釣りや虫取りの穴場、大事にして欲しい木などを、鳴き声や飛ぶ姿を通して伝えようとする。
森の住人である、鳥のカケスの目線で、お話が進みます。
キャンプにやってきた家族の様子を見物しながら、森の良さや、楽しさを共に味わいます。
一番のおすすめは、夜のシーン。
焚火のはぜる音、真っ暗な森の夜空に広がる満点の星空。
会話が書かれてないからこそ楽しめる森の情景を、ページいっぱいに広がった絵から味わう事ができます。
キャンプが大好きな子供も、そうではない子も、森の魅力にとりつかれるでしょう。
私たちが森に足を踏み入れるとき、森の住人達は、森の良さを自慢しようと、おしゃべりをしているのかもしれません。
子供と一緒に、そんな声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。