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母乳の分泌を促す効果のある方法をご紹介します。
産後、母乳不足に悩むママはとても多いですが、その悩みにつけこんで、効果が不明な食品やマッサージを高額で販売する事例が多数あります。
そうではなく自宅で手軽にできる方法だけをまとめています。
頑張ってみて、出ないならミルクで構わない
厚労省の調査(乳幼児栄養調査平成27年度)では、93.4%もの母親が母乳で育てたいと思っていたと回答しています。
母親だけでなく、家族や、周囲の人も、赤ちゃんを産めば自然と母乳が出るようになり、母乳で赤ちゃんを育てていくものだと考えているかもしれません。
しかし、実際に赤ちゃんが生まれてみると、思うように母乳が出ないことは、決して珍しいことではありません。
母乳が出ないために、理想としていた完全母乳での育児ができず、辛い思いをしているママがたくさんいることでしょう。
そんなママに、まず知ってもらいたいのは、完全母乳で育てることは、決して「当たり前」のことではないという「事実」です。
冒頭に紹介した厚労省の調査では、完全母乳で赤ちゃんを育てている人は「5割程度」にすぎません。
完全母乳で育てられないからと言って、自分を責める必要はないのです。
そもそも、母乳は、脳下垂体から分泌されるホルモン(プロラクチン)が作用して分泌されます。
母乳が出るようになる言われる事を可能な範囲で試してみて、それでもダメなら堂々と混合栄養(またはミルクのみ)で育てましょう。
母乳を増やすための方法
1.乳頭(乳首)を頻回に吸わせる
母乳育児を支援する方法としてWHOが「母乳育児を成功させるための10か条」をまとめていますが、そのひとつに「赤ちゃんが欲しがるときは、いつでも母親が母乳を飲ませてあげられるようにしましょう」という項目があります。
そもそも母乳(乳汁)は、「プロラクチン」というホルモンによって、乳腺に母乳を作り出すように働きかけることで生産されます。
その「プロラクチン」は産後9日までは、乳頭を刺激することで分泌が促されます。
つまり、母乳を増やすためには、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうことが何よりも効果があると言えるのです。
産後9日以降も母乳が排出された量に合わせて母乳が生産されるため、頻繁に赤ちゃんに吸ってもらって母乳を出しきることが重要になります。
「お腹がすいた」という理由以外で赤ちゃんが泣くこともありますが、乳頭を刺激する頻度を増やすためにも、乳腺内の母乳を空っぽにするためにも、泣いたら、まずはおっぱいを吸わせましょう。
もちろん、泣いている理由が「おむつ(特にうんち)」であれば、交換してから実践しましょう。
繰り返しになりますが、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらう(何らかの事情で吸ってもらえない場合は搾乳をする)ことが母乳を増やす唯一の確実な方法です。
以下に列挙する方法は、あくまで補助的なものであり、母乳を増やす直接的な方法ではありません。
2.しっかり食事をとる
母乳は「血液」から作られます。
そのため、よく食べて「血」を作ることがとても重要です。
しかし、出産年齢である20代、30代の女性はやせ型(BMI18.5未満)である人が多く、授乳中に必要なエネルギー量を摂取していない可能性があります。
厚労省の「妊産婦のための食生活指針」によれば、授乳中の女性が1日に必要なエネルギーは、年齢や体重、生活強度によっても異なりますが、最低でも2150kcalは必要だと推定しています。
このエネルギー量を摂取するには、1日どれだけ食べる必要があるかと言えば、
+野菜炒め3皿
+焼き魚2匹
+牛乳コップ1杯
+みかん2個
(※あくまでカロリーの目安です。実際にはバランスのいい食事を食べましょう。)
となります。
少なくともこれだけの量をしっかり食べいるでしょうか?
今までの食生活を思い出して、必要に応じて量を増やしましょう。
なお、授乳中のバランスのいい食事についてはこちらで詳しく紹介しています。
https://cawaiku.com/child/0-old/food-for-mother-1709
3.暖かいものをたくさん飲む
食事と同じですが、血液からできる母乳には、食べ物だけでなく飲み物(水分)も必要です。
厚労省では、食事以外で1日1.2リットルに水分補給をすることを推進しています。
授乳中ではない一般人でもこれだけの量が必要ですから、母乳が1日500cc以上も出る可能性のある授乳中のママであれば、より多くの水分を飲みましょう。
母乳を出すためには、体を温めて血行を良くすることが望ましいため、冷たい水ではなく、白湯など暖かいものを飲みましょう。
なんとなく喉が渇いたからお茶を入れて飲むという方法では、どれだけ飲んだのかわかりません。
そこで、確実に水分量を満たすために、500mlの水筒に、白湯、ノンカフェインのお茶類などを、ホットで入れて1日3回は飲み干すようにしましょう。
4.睡眠時間を増やす
母乳の生産を促すプロラクチンは睡眠中により多く分泌されます。
したがって、育児中の睡眠はとても大切です。
出産後も、妊娠中と同じ時間に寝て、起きるという生活をしていないでしょうか?
もしそうであれば、赤ちゃんは昼も夜もなく起きるため、夜中に赤ちゃんを世話をしている分、寝ている時間が短くなっています。
また、生後3ヶ月・4ヶ月くらいまでは、2~3時間に1回は「お腹が空いた」と起きて泣くため、まとまった睡眠がとれません。
もし、育児だけでなく家事によっても睡眠時間が確保できないのであれば、パパにも協力してもらいましょう。
ご飯の支度や掃除、洗濯など、パパができる家事は自分でやってもらい、少しでも睡眠時間を増やしましょう。
5.軽い運動をする
軽い運動は、血行を促進し、育児でのストレスを和らげる効果が期待できます。
赤ちゃんと2人きりだと、外に出て運動することも難しいでしょうから、赤ちゃんが寝ている間に、好きな音楽を聞きながら、室内でストレッチ運動をしてみてはどうでしょうか?
ストレッチに難しい知識は必要ありません。
痛くない程度に、手、足、背中、お腹、首などを様々な方向にゆっくりと伸ばすだけ十分です。
伸ばす前に大きく息を吸って、ゆっくりと吐きながら伸ばすとよいでしょう。
また、「アフタービクス」と呼ばれる産後6週以降の運動講習を実施している産科も多くありますので、参加してみるとよいでしょう。
ママ友なども作れるので育児に関する悩みなども共有できて励みになります。
6.ゆっくりとお風呂に入る
運動と同じく、血行をよくし、ストレス解消になります。
のぼせないように、ぬるめのお湯で、30分程度入浴します。
入浴後にはしっかりと水分補給をすることを忘れないでください。
7.おっぱいマッサージをする
マッサージも基本的には運動や入浴と同じく血行を促進して母乳の分泌を促します。
それ以外でも乳管を広げて、うつ乳を防ぐ効果も期待できます。
入浴時など体が温まった特に行います。
おっぱいマッサージには、桶谷式、三森式、SMC式など様々な方法がありますが、自己流ではなく、病院や助産院で助産師に母乳相談をして、自宅でのマッサージ方法を教わるのが確実です。
(参考出典)
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド2019年改定版」
妊産婦のための食生活指針
厚生労働省「健康のために水を飲もう」
厚生労働省「乳幼児栄養調査」
医学書院「新看護学・母子看護」
医学書院「母性看護学2」
南山堂「母乳育児学」
インターメディカ「母性看護技術」