目次
赤ちゃんを育てる上で欠かせない母乳。
母乳で赤ちゃんを育てる上での基礎知識を紹介します。
母乳は赤ちゃんが欲しいだけあげる
世界保健機関(WHO)が母乳育児を成功させるために、産科医療機関で働く人のために、10個の方針を発表しています。
10か条のなかで、母親が授乳するときの考え方として、退院後も活用できるのが、「欲しがるときは、いつまでも飲ませてあげる」という条文です。
おっぱいがたくさん出て、赤ちゃんも出るだけ飲み続けてしまい、体重が1日平均50g以上も増えてしまう赤ちゃんがいますが、それでも気にする必要はありません。
「欲しがるだけあげる」が、第一の基本です。
これは、「自律授乳方式」と呼ばれる授乳方法です。
(参考)「母乳育児を成功させるための十か条」(WHO、UNICEF)
1. 母乳育児推進の方針を文書にして、すべての関係職員がいつでも確認できるようにしましょう。
2. この方針を実施するうえで必要な知識と技術をすべての関係職員に指導しましょう。
3. すべての妊婦さんに母乳で育てる利点とその方法を教えましょう。
4. お母さんを助けて、分娩後30分以内に赤ちゃんに母乳をあげられるようにしましょう。
5. 母乳の飲ませ方をお母さんに実地に指導しましょう。また、もし赤ちゃんをお母さんから離して収容しなければならない場合にも、お母さんの分泌維持の方法を教えましょう。
6. 医学的に必要でないかぎり、新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないようにしましょう。
7. お母さんと赤ちゃんが一緒にいられるように、終日、母子同室を実施しましょう。
8. 赤ちゃんが欲しがるときは、いつまでもお母さんが母乳を飲ませてあげられるようにしましょう。
9. 母乳で育てている赤ちゃんにゴムの乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう。
10. 母乳で育てるお母さんのための支援グループ作りを助け、お母さんが退院するときにそれらのグループを紹介しましょう。
母乳の必要摂取量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(平成27年)」によると、生後0か月~5か月までの乳児が必要とするカロリーは、男の子が550キロカロリー、女の子が500キロカロリーです。
これを母乳の量に換算すると男の子で850グラム、女の子で770グラムとなります。
この必要量を母乳で本当に摂取できているか知るためには、毎回、体重計を使って計測しなければなりません。
しかし、それは現実的ではないため、通常、何らかの理由で医師や助産師からの指示がない限り、赤ちゃんの体重を1週間に1回くらいのペースで計測し、その増加傾向を確認します。
体重が増加の目安は、次のようになります。
多少、目安よりも少なかったとしても、増加傾向にあるのであれば、心配の必要はありません。
母乳が足りているか確認する方法
母乳が足りているか知るためには、体重計測が最も確実な方法です。
この他にも、確認する方法がいくつかあるので紹介します。
1.母乳の張りが弱くなる
母乳量は赤ちゃんの哺乳量に合わせて分泌量が哺乳されるため、定期的な時間間隔で授乳をしているのであれば、授乳前にはある程度おっぱいが張っています。
そして、赤ちゃんがしっかり哺乳できていれば、乳汁が排出されるので、哺乳後はおっぱいの張りが弱くなります。
2.おしっこが1日6~7回程度でている
赤ちゃんは膀胱が小さいために1日20回程度おしっこをします。
ただし、気候や服装の影響で汗を多くかくこともあるため、その際には尿の量は少なくなります。
オムツを交換する際に、ほぼ毎回、おしっこが出ているのであれば、母乳量は足りている可能性が高いです。
3.授乳後を30分以内で泣く
新生児の場合、授乳後も30分以内で泣いて、おっぱいを欲しがるのであれば、足りていない可能性があります。
生後1か月を過ぎた乳児の場合は、授乳後1時間以内に泣くと足りていない可能性もあります。
ただし、赤ちゃんはおっぱい以外の理由で泣くこともあります。
授乳後に毎回のように泣くようであれば、おっぱい不足の可能性が高くなります。
4.30分を超えて吸い続ける
赤ちゃんが必要とする母乳量が十分に出ているのであれば、20分くらいで赤ちゃんは飲まなくなります。
もし、開始から30分を超えてもなお吸い続けている場合は、母乳が足りないサインかもしれません。
抱き方など赤ちゃんにあった授乳ができているか助産師さんに相談すると良いでしょう。
完全母乳にこだわらず粉ミルクも上手に使う
厚生労働省の「母乳栄養調査(平成27年)」によると、妊娠中は9割超の女性が母乳での育児を望んでいます。
しかし、実際に母乳だけで育児をしている母親は、生後1か月で51.3%、生後2ヶ月で54.7%です。
母乳には本当に多くのメリットがあるため、完全母乳にこだわりすぎてしまう母親もいるようです。
しかし、調査結果を見てもわかるように赤ちゃんの半分は混合栄養か人工栄養(粉ミルク)で育てられています。
粉ミルクにも次のようなメリットがあります。
とは言え、ミルクを使い過ぎると授乳機会が減って母乳の分泌量も減ってしまうので、母乳を中心に育児をしたいという希望があれば、ミルクの使う直前に母乳を与え、足りなそうにしていたら粉ミルクを飲ませるようにします。
完全母乳にこだわりすぎてお母さん自身がストレスにならないように、気をつけましょう。
(参考出典)
産科学会母乳ガイドライン
厚生労働省「母乳栄養調査結果」
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド2019年改定版」
医学書院「新看護学・母子看護」
南山堂「母乳育児学」