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6月10日にNHK Eテレで「食物アレルギー」の最新情報について放送されました。
同番組の概要に加えて、昨年12月に発表された国立育成医療研究センターの食物アレルギーに関する研究結果についても紹介します。
「食物アレルギー」の最新情報(「すくすく子育て」まとめ)
6月10日のEテレ「すくすく子育て」では、国立育成医療研究センターアレルギー科医長の大矢幸弘先生と、神奈川県県立こども医療センター皮膚科部長の馬場直子先生をゲストに「食物アレルギー」に関する最新情報について紹介しました。
※食物アレルギーであると診断された子供について自己判断でアレルギー原因の食物を与えることは極めて危険ですので、必ず専門の医師に相談したうえで予防・治療を行ってください。
1.食物アレルギーの見分け方
基本的に「かぶれ」は食べ物が肌に付着しその刺激によって顕れる発疹で、「アレルギー」は発疹や吐き気などの全身症状を伴うものです。
医師以外が「食物アレルギー」と「かぶれ」を見分けるのは難しいため、食後に異変があれば医療機関で調べてもらいましょう。
また、アレルギーだと勘違いをして、独断でその食べ物を除去してしまうと、本来は食べることができた子供が、後々に本当の食物アレルギーになってしまうこともあるそうです。
特に湿疹のある子供は発症するリスクが高いので、自己判断で食べ物を除去するのではなく必ず医師に相談する必要があります。
2.食物アレルギーの原因
まず、親が食物アレルギーや鼻炎や喘息などアレルギー疾患を持っているからといって、子供が食物アレルギーになりやすいということはありません。
「食物アレルギーは遺伝しない」そうです。
では、なぜ食物アレルギーになってしまうのでしょうか?
そのメカニズムは完全には解明されていませんが、皮膚の「湿疹」が原因であると考えられているそうです。
本来、口から入るべき食べ物が、湿疹などの肌荒れによって皮膚から体内に取り込まれてしまうと「異物」とみなされて抗体ができやすくなるということが、最近の研究でわかってきました。
2008年にイギリスとイスラエルでピーナッツアレルギーの調査をしたところ、乳児期にピーナッツをよく食べているイスラエルの子供の方がピーナッツアレルギーの発症率が「低い」ということが判明したそうです。
さらに2012年にイギリスで5歳のピーナッツアレルギーの発症率を調査すると、乳児期にピーナッツを全く食べなかった子供の発症率は13.7%であったのに対し、乳児期にピーナッツを食べていた子はわずか1.9%だったのです。
また、日本においても生後5か月までにアトピー性皮膚炎になった子供を対象に1歳時点での卵アレルギーの発症率を調査したところ、卵を食べさせていた子供の卵アレルギー発症率が8割も抑えられたという結果がでたそうです。
これらの調査・研究の結果により、アレルギーの予防や治療は、アレルギー原因物質である食べ物の「除去」するのではなく「食べる」という方針に大きく転換したそうです。
アレルギーを心配して、離乳食を遅らせることはむしろ逆効果で、アレルギーを発症するリスクを高めることになるのです。
ただし、すでに食物アレルギーであることがわかっている場合には、自己判断で食べさせるのではなく、医師の指導の下、適切な治療と摂取が必要となります。
3.食物アレルギーの予防
食物アレルギーを予防するためには、皮膚に湿疹(乳児湿疹)が出ないように、徹底したスキンケアが必要だと考えられているそうです。
そもそも乳児は、羊水の中から産まれて、急に乾燥した世界で生活をすることになるため乳児湿疹になりやすいそうです。
特に現代社会においては、気密性の高い住宅に住んでいるうえに、エアコンを使うことで室内の湿度が低くなります。
さらに、清潔志向で石鹸などを使って何度も皮膚をこするために皮膚のバリア機能が低下しているそうです。
そのため皮膚が乾燥しないように保湿クリームを使うと共に、乳児湿疹になって処方されたステロイドについても怖がらずに医師の指導もと適量を塗り続けることが必要です。
ステロイドを塗って皮膚表面が良くなったとしても、しばらくは皮膚の下では炎症が続いているため、もしすぐにステロイドの使用を中止してしまうと、リバウンドしてしまうそうです。
4.食物アレルギーの治療
食物アレルギーの治療は「スキンケア」とアレルギーの原因となっている食物を「食べる」ことだそうです。
まず、スキンケアをすることで食物が皮膚から体内に入り込むことを防ぎます。
次に、専門の病院でアレルギー食物の食べられる量を調べる「食物経口不可試験」をしたうえで、医師の指導の下、少しずつ食物を摂取していきます。
徐々に量を増やしていくことで、食べられる量が増えて克服することができるそうです。
なお、スキンケアは食物アレルギーに限らず、喘息やアトピーなど次々にアレルギー疾患を発症してしまう「アレルギーマーチ」の予防にも有効です。
日本における食物アレルギーの最新研究について
Eテレの「すくすく」でもゲスト解説者として参加していた国立成育医療研究センターアレルギー科の大矢幸弘医長などの国内の研究グループが行った食物アレルギーの研究について紹介します。
詳細については2016年12月に公表された「離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見」をご覧ください。
ここでは、同研究結果をわかりやすく要約しています。
※アレルギーであると診断された子供について自己判断でアレルギー原因の食物を与えることは極めて危険ですので、必ず専門の医師に相談したうえで予防・治療を行ってください。
1.調査の目的
国内外の先行する様々な研究事例から「離乳早期から卵を摂取すると卵アレルギーが予防できるかもしれない」という仮説に基づき、予防効果の有無について調査をしています。
2.調査の方法
食物アレルギーを発症する確率が高い「生後4か月までにアトピー性皮膚炎」を持つ子供をランダムで2つのグループに分けて、1つのグループには粉末状の「全卵のゆで卵(50~250mg)」を、もう1つのグループには粉末状の「カボチャ」をそれぞれ生後6カ月から食べさせました。
そして1歳(生後12か月)における「鶏卵アレルギー」の発症率を調査しています。
3.結論
この研究結果により、離乳早期から卵を摂取すると卵アレルギーが予防できると結論付けられました。
卵を食べていた乳児の鶏卵アレルギー発症率は、カボチャを食べていた乳児と比べて8割も抑制されていたのです。
なお、この研究方法は「ランダム化比較試験」に該当するものであり、科学的な根拠としては上から2番目に高いレベルになるそうです。