話題の「こども保険」って何?

最近の新聞やテレビなどで「こども保険」のニュースを見たことはありますか?

2017年3月29日に与党・自民党の若手議員が幼稚園や保育園の利用料金を無償化する「アイデア」として提言したため、今、とても注目されている政策なのです。

すぐに実現する政策ではないのですが、将来の子育て環境に大きな影響を与えるかもしれません。

どんな制度なのか知っておきましょう。

「こども保険」は児童手当の給付額を上乗せする制度

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幼稚園や保育所を無償化するといっても、幼稚園ごとに学費は異なりますし、保育所でも所得や住んでいる自治体によって利用料が異なります。

「こども保険」は、残念ながらこれらの料金が一律無料になるという制度ではありません。

端的に言うと、現在、皆さんが給付されている児童手当の給付額を増額するという制度になります。

改めて現在の児童手当の金額を見てみましょう。

0~3歳未満月額15000円
3歳~小学生月額10000円(第3子以降は15000円)
中学校月額10000円


※一定の所得を超えた場合は年齢に関わらず1人当たり一律5,000円(月額)

「こども保険」によって、小学校就学前までの期間について、今の月額10,000~15,000円の給付額から35,000~40,000円まで増額しようというアイデアなのです。

確かに4万円もあれば、所得によって保育園の利用料は実質的に無料になりますし、大部分の幼稚園でも入学金を除けば学費は無償に近い金額になります。

育児の金銭的な負担が軽くなるので、子育て世代には嬉しい制度のようにも感じますが、何か落とし穴はないのでしょうか?

民主党が与党だったとき「こども手当」を創設したものの、財源が不足しているということで、当初予定していた「月額2万6千円」の給付ができなかったという苦い過去もあります。

なぜ「手当」ではなく「保険」という名称なのか?

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当たり前の話ですが、「こども保険」を実現するためには、「財源(=お金)」が必要です。

その額は、なんと「約1兆7000億円」と試算されています。

国は1000兆円を超える借金(国債)を抱えているため、そう簡単に財源をねん出することは出来ません。

財源を確保するアイデアとしては、大きく2つあります。

1.「教育国債」を発行する

「財源がなければ借金をすればいい!」という考え方です。

「え?さらに借金をするの?」と思うかもしれませんが、高校や大学も含めて教育を無償化することで、親の経済的な負担がなくなり、子供を産み育てたいという機運を高めることができるという考え方もあります。

その結果、出生率が上がり、将来の納税者が増えるので「未来への投資」につながるかもしれません。

しかし、目論見通りに子供が増えるとは限りませんし、作った借金を返済するのは、実質的に生まれてきた子供たちになるため、財務省はもちろん、与党の議員の中にも根強い反対論があります。

国債は単なる借金にすぎないため、結局は消費税などの税率を上げるなどして、借金を返済するための財源を確保する必要がでてくるでしょう。

2.保険にして「掛け金」を集める

「教育国債は、将来にツケを回すだけなので支持できない」という与党議員により提唱されているのが、今回の「こども保険」です。

健康保険や年金保険と同じく、「保険料」を薄く広く徴収することで、給付金の財源をねん出しようというアイデアです。

「教育国債」は、返済するための財源が「あいまい」であり、雪だるま式に借金が増える懸念があるのに対して、「保険料」は制度の創設・拡充に合わせて、財源が確実に確保されるというメリットがあります。

「こども保険」の創設を提言した国会議員によると、最初は、社会保険料を0.2%増額(自己負担は0.1%)して児童手当の月額を5000円増額するとしています。

そして、将来的に社会保険料を1%(自己負担は0.5%)まで増やして、児童手当の月額を25,000円増額させたいと考えています。

実現性はあるか?

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現在、与党が国会の両院の3分の2を占める「安定」状態が続いているため、政府と与党が本気になりさえすれば、財源が明確な「こども保険」を創設することはそれほど難しいことではありません。

しかし、「こども保険」の創設には、世論の強い反発も予想されます。

そもそも「こども保険」は健康保険や国民年金保険のようにほぼ全ての人に恩恵(給付)がある制度とは明らかに違います。

例えば、「子供を作らないことを選択している」人もいれば、「子供を生みたくても産めない」という人もいます。

これらの人たちが、保険料を負担してもよいと思ってくれるでしょうか?

また、厚生年金(国民年金保険)に上乗せするのであれば、働いている現役世代の負担はますます増える一方で、年金生活の高齢者は負担しなくて済むことになり、「社会全体」で子育てしやすい環境を作る制度とは言えない側面もあります。

さらに言えば、子供が大きくなって小学生になってしまった家庭では、負担は増えるけれども給付金の上乗せは受け取れないということになるため、強い不公平感を感じるでしょう。

仮に創設するとしたら、すでに子供が大きくなっている世帯については保険料を免除するなどの措置が必要かもしれません。

その場合にも、「子供のいない人だけが損をしている」という反発がでてくることは間違いありません。

子供の福祉を考える上では、「子供が成長すれば、納税者となって年金や医療といった社会制度の支え手になってくれる」という視点を忘れないようにしたいものです。

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