母乳性黄疸とは何か?

母乳が原因で、新生児の黄疸が続いてしまうことがあります。

「なぜ、母乳が黄疸を引き起こすのか?」原因と治療について解説します。

この記事には疾病の情報が一部に含まれています。当記事を参考にした自己診断は決して行わないでください。気になることがあれば、医療機関を受診することを強くお勧めします。自己診断によるトラブルは一切の責任を負いかねます。

生理的黄疸と母乳性黄疸

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1.生理的黄疸とは?

黄疸は、血液中にある「ビリルビン」という黄色い物質が増えることで、皮膚の色を黄色くする症状のことを言います。

新生児は、ビリルビンの素となる赤血球の量が比較的多いことが知られています。

その理由は、お母さんの胎内は酸素が少なく、これを効率的に取り込むために大量の赤血球が必要となるためです。

胎内にいる時に作られた赤血球の寿命は短く、出産後に赤血球が壊されることで、「ビリルビン」が大量に生成され、黄疸になるのです。

新生児黄疸は生後2,3日からあらわれます。

その後、哺乳によって排便が繰り返され、血中の「ビリルビン」が体外に排出されるため、1週間を過ぎると黄疸は見られなくなります。

新生児黄疸は、新生児の90%にみられる正常なものです。

遷延性黄疸とは?

しかし、何らかの異常によって、2週間を過ぎても黄疸が消えない場合があります。

これを遷延性黄疸と言います。

遷延性黄疸は、胆道閉鎖症などの病気が原因であることもありますが、多くの場合、母乳が原因となって引き起こされます。

3.母乳性黄疸とは?

遷延性黄疸の中でも発達や発育が正常な場合で、他に病気もないものを「母乳性黄疸」と呼びます。

母乳性黄疸になる原因としては、母乳不足が考えられます。

通常は、赤ちゃんが哺乳をして排便・排尿をすることで、ビリルビンの排泄が促されるため、1週間程度で黄疸が消失するのですが、母乳が不足しているためにビリルビンの排泄が追いつかず、黄疸が長引いてしまうことがあります。

しかし、母乳性黄疸になる赤ちゃんは十分に母乳が飲めていて発育も順調であることが多く、はっきりとした原因はわかっていません。

母乳性黄疸になったら

黄疸(高ビリルビン血症)になった場合には、医師が個々の赤ちゃんの状態に合せて必要な処置を行います。

以下では、「母乳性黄疸」の一般的な対応事例について紹介します。

1.特別な治療はしない

重症の黄疸になると、脳性まひや聴覚障害などの後遺症が残る場合があります。

これは「核黄疸」と呼ばれています。

しかし、母乳性黄疸では「核黄疸」に発展することはありません。

そのため、新生児が飲む母乳量が十分であり、かつ、発育・発達に問題がなければ、「光線治療」などの治療は必要がないと判断されることがあります。

母乳育児はそのまま継続され、場合により哺乳量を増やすために搾乳した母乳を哺乳瓶で飲ませたり、粉ミルクを授乳後に足すなどの対応がとられることもあります。

母乳性黄疸は、赤ちゃんの排泄頻度や肝機能の処理能力などによっても左右されるため、一度、消失しても再び顕れることがありますが、およそ2~3か月で自然に消失します。

2.予防的に光線治療をする

溶血性疾患や胆汁閉鎖症、胆道拡張症などの病気が原因となって顕れる黄疸でない場合は、生理的黄疸や母乳性黄疸であることが考えられます。

生理的黄疸や母乳性黄疸であっても、血液中のビリルビン値が基準値を上回る場合には、「核黄疸」を予防するために、ビリルビンを早期に体外へと排出する「光線療法」を行います。

光線(青い光)を赤ちゃんの皮膚にあてることで、ビリルビンを便や尿から排泄しやすいように性質に変換します。

「光線療法」が必要とされる基準値は、出産時の体重や生後日齢によって異なります。


(参考出典)
医学書院「新看護学・母子看護」
金原出版「小児看護学」
小学館「家庭の医学大辞典」
学研「赤ちゃんの病気全百科」
ベネッセ「赤ちゃんの病気新百科」
日本小児栄養消化肝臓学会
メルクマニュアル
ひらしま産婦人科
くらしげ小児科

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