赤ちゃんに慢性的な下痢の症状がみられる代表的な病気について解説します。
様々な下痢の症状について
下痢の症状がみられる場合には医療機関を受診し、適切な処置を受けるようにしましょう。
以下では下痢の症状の違いから考えられる代表的な病気について紹介しています。
1.下痢は「慢性」か「急性」か?
ある日、突然、下痢が始まるような「急性」の場合は、ウィルスや細菌を原因とする感染症が考えらます。
感染症による下痢は、通常、3~4日程度で収束します。
もし、1週間以上下痢が続くような「慢性」的な症状であれば感染症以外の原因も疑われます。
2.下痢の色が「白」か「赤」か?
病気によっては、下痢の色が黄色ではなく「白」や「赤」などの場合もあります。
白い下痢
色の「白い」下痢を「白色便性下痢症」と言います。
これは、ロタウィルスをはじめとするウィルス性の感染性胃腸炎が疑われます。
赤い下痢
次に「急性」の下痢で、色が「赤」の場合、つまり「血便」の場合には、主に「細菌」を原因とする感染性腸炎(食中毒)の可能性があります。
また、腸が腸の中に入り込んでしまう「腸重積症」でも血便の症状がみられることがあります。
新生児の慢性的な下痢の原因
慢性的な下痢は、乳糖不耐症、アレルギー性腸炎が原因となっていることがあります。
下痢が続いていたり、赤ちゃんの体重が増えない状況が続いていれば、早めに医療機関を受診しましょう。
1.乳糖不耐症
乳糖不耐症は、母乳やミルクに含まれる乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」が欠乏しているか、働きが弱くなったときに発症します。
「ラクターゼ」の活動が弱いと、母乳やミルクを十分に腸内で消化できず、下痢になります。
乳糖不耐症の赤ちゃんには、不足したラクターゼを補う酵素を服用させるか、乳糖を含有していないミルクを飲ませて治療を行います。
乳糖不耐症は「先天性」か「後天性」かで2種類に分けられます。
一次性ラクターゼ欠乏症
遺伝子異常のため生まれつきラクターゼが欠乏している赤ちゃんが発症します。
生後、最初に母乳やミルクを哺乳させた時から、下痢を繰り返します。
そのため、乳糖が入っていない治療用ミルクを使用して育てることになります。
この先天的なラクターゼ欠乏症は、非常に稀な病気であり、難病にも指定されています。
なお、早産(34週まで)で生まれた新生児は、消化器官が未発達で、ラクターゼが不足しているため乳糖不耐症になりやすいとされています。
二次性乳糖不耐症
乳糖不耐症のほとんどは、この二次性乳糖不耐症とされています。
多くの場合は、ロタウィルス等の腸の感染症によって、ラクターゼの働きが弱くなり発症します。
感染性胃腸炎を発症してから1週間以上たっても下痢の症状が治まらない場合には、この二次性乳糖不耐症が疑われます。
乳酸を分解する酵素を薬で補うとともに、乳糖が含まれていない代替ミルクを使用して治療を行います。
2.アレルギー性腸炎
アレルギー性腸炎は新生児でも発生する食物アレルギーです。
原因物質は、牛乳、母乳、大豆で、大半は粉ミルク(牛乳由来のため)が原因となります。
レルギー性腸炎の特徴的な症状としては、「下痢」以外にも嘔吐、血便が見られます。
患者の大半は複数の症状が同時に出ます。
むしろ、症状が「下痢だけ」の患者は軽度であるとされます。
アレルギー疾患であるため、2歳になるまでには、9割の子供が原因物質に対する耐性を獲得し、治ることが知られています。
母乳や粉ミルクに変えて治療用ミルクで栄養を摂る必要があります。
(参考出典)
医学書院「新看護学・母子看護」
金原出版「小児看護学」
小学館「家庭の医学大辞典」
学研「赤ちゃんの病気全百科」
ベネッセ「赤ちゃんの病気新百科」
新生児・乳児アレルギー疾患研究会
難病情報センター
メルクマニュアル医学百科
日本大腸肛門病学会