赤ちゃんや子供がかかりやすい「百日咳(ひゃくにちぜき)」がどのような病気か解説します。
百日咳とは?
「百日ぜき菌」が原因で発症する呼吸器の感染症です。
1.主な症状
「百日」とあるように、激しい咳が何日も続く病気で、治るまで6~10週間かかります。
最初の1~2週間は、くしゃみ、鼻水、咳などの風邪症状が出ます。
熱は基本的にありません。
その後、次第に咳が強くなり、何度も咳き込むようになります。
同時に、息を吸う際に「ひゅー、ひゅー」という笛のような高い音がでます。
強い咳の発作は数週間で収まりますが、その後、大量の痰がでます。
2.乳児は死亡することも
生後6か月以内の乳児が「百日ぜき」に罹った場合、肺炎になる確率は12%(一般は6%)もあり、死亡率は0.6%(一般は0.2%)です。
重症化しやすいため注意が必要です。
乳児は、咳の発作だけでなく、「無呼吸発作」と呼ばれる一時的に息のできない状況になることがあります。
また、肺炎によっても呼吸困難になり、挿管による人工呼吸が必要になることもあります。
3.予防接種をしても感染することがある
百日咳は、ワクチンによって予防することができます。
生後3ヶ月から接種できる「DPI-IPV」という混合ワクチンです。
早めに接種しましょう。
ただし、ワクチンを打ったとしても、100%予防できるわけではありません。
ワクチンを接種しても15~20%の子供が感染します。
ただし、重症化することは少なくなります。
予防接種を受けると、感染したとしても軽い咳の症状だけですむため、見過ごされることがあります。
咳が何日も続くようであれば、百日咳を疑ってみましょう。
4.治療法
百日咳に効果のある抗生物質を投与して治療します。
症状が重い場合は入院が必要です。
「百日咳」以外の長引く咳の原因
「百日咳」以外ではどのような病気で咳の症状が長引くのでしょうか?
代表的な例をご紹介します。
1.喘息
気管支ぜんそく
気道が狭まる発作により呼吸が苦しくなる病気です。
気管支ぜんそくの症状は、咳だけでなく、息を吐くときに「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」という「喘鳴」(ぜんめい)が出ます。
風邪の症状がなく、喘鳴がある場合には、喘息の可能性があります。
せきぜんそく
気管支ぜんそくが、「喘鳴」と「呼吸困難」を伴うのに対して、せきぜんそくは「喘鳴」も「呼吸困難」もありません。
「痰」が絡まない「空咳」だけが続きます。
風邪による気管の粘膜の炎症が発端となって起きるとされています。
放置しておくと、気管支ぜんそくに発展することがあるため、医療機関を受診して治療を受けます。
2.鼻炎・副鼻腔炎
鼻炎
鼻漏(鼻水)が、喉の奥に落ちることが原因で咳がでます。
風邪によって鼻炎になると、鼻漏が増えます。
発熱や鼻水の症状が改善された後も、実はまだ鼻炎が続いていて、鼻漏が喉に落ちていることがあります。
鼻漏による咳は1~2週間続くこともあります。
副鼻腔炎
風邪などによる鼻炎に引き続いて、細菌による2次感染が起き、鼻(鼻腔)とつながっている副鼻腔とよばれる空洞にも炎症による膿(うみ)がたまってしまう病気です。
咳が出るメカニズムは、鼻炎と同じです。
早期に抗生物質を使って治療をし始める必要があります。
治療が遅れると慢性化して治りにくくなります。
3.先天異常
非常に稀なケースではありますが、先天的な理由で咳が続くことがあります。
喉頭(声帯の周辺)にある軟骨が、空気を吸う時につぶれて気道が狭くなってしまう「喉頭軟弱症」や、気管支の一部が生まれつき狭い「気管支狭窄」が原因で、咳や呼吸困難を起こしていることがあります。
(参考出典)
厚生労働省「百日ぜき」
母子衛生研究会「母子健康手帳 副読本」
医学書院「新看護学・母子看護」
金原出版「小児看護学」
小学館「家庭の医学大辞典」
学研「赤ちゃんの病気全百科」
ベネッセ「赤ちゃんの病気新百科