なぜ国民健康保険に「出産手当金」はないのか?それでも受け取る裏ワザ紹介!

残念ながら国民健康保険には「出産手当金」がありません。

その理由と「どうしても受け取りたい!」人のための受給方法を解説します。

国民健康保険では「出産手当金」が受けられない

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国民健康保険とは、基本的に会社の健康保険組合に加入していない人が、必ず加入をしなくてはならない健康保険です。

住んでいる市区町村の役場で保険加入の手続きを行い、毎月、保険料を納めます。

しかし、会社員が加入する健康保険組合には「出産手当金」の給付があるにもかかわらず、国民健康保険には「出産手当金」の給付がありません。

一方で、似たような給付である「出産育児一時金」は、健康保険組合にも、国民健康保険にも同じように存在します。

なぜ、このような状態になっているのでしょうか?

出産手当金がない国民健康保険の仕組み

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国民健康保険の給付内容については「国民健康保険法」という法律で定められています。

法律では、保険給付を3つの種類に分けています。

1.法定必須給付

法定必須給付は、法律上で実施が義務となっています。

国民健康保険の加入者(被保険者)には、必ず保険を給付する必要があります。

以下の12給付が法定必須給付です。

療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、高額療養費、高額介護合算費、特別療養費

聞きなれない給付もあるかと思いますが、最も利用するのが「療養の給付」です。

病気や怪我をしたときに、病院の窓口で医療費の3割を自己負担で支払っています。

そして残りの7割を「療養の給付」として、保険者(国民健康保険)が負担しています。

2.法定任意給付

法定任意給付は、法律では義務となっていません。

しかし、原則として給付することになっています。

そこで、国民健康保険を運営する各市町村は条例を作って、国保の加入者に給付を行っています。

具体的な給付は次の2つです。

出産育児一時金、葬祭料・葬祭の給付

「出産育児一時金」は、法定任意給付に入っています。

このため会社の健康保険組合と同様に、国保の加入者も「出産育児一時金」を受け取ることができます。

3.任意給付

任意給付とは、国保を運営する市町村に実施を義務付けていない給付です。

実施するかしないかは市町村が決めていいということになっています。

任意給付も以下の2つです。

傷病手当金、出産手当金

この2つの手当金は、ともに病気や出産で「仕事ができないときの所得保障」という性質を持った給付です。

残念ながら、国民健康保険では、病気や怪我、出産などで、一時的にかかる医療費については給付を実施していても、所得保障の給付については実施していません。

4.国民健康保険を運営する市町村の国保財政は大赤字

現状では、国保の加入者に出産手当金はありません。

しかし、「任意給付」ですから、市町村がやる気を出せば、実施は可能です。

ところが、将来的にみても、今の国民健康保険制度のままでは、傷病手当金や出産手当金が実施される可能性は99.9%ないと言っていいでしょう。

理由は、国民保険財政の慢性的な赤字です。

人口の多い自治体だと、累積で何百億円という途方もない赤字になっています。

赤字になる理由は、国保の加入者には、高齢者や無職の方が多いからです。

高齢者が多いと所得が少ないため、保険料を高くすることは出来ません。

その上、高齢者は病気になりやすく医療費が多くかかります。

つまり、保険給付の「支払いが多い」のに、保険料による「収入が少ない」ため、どうしても赤字になってしまうのです。

国民健康保険は、所得の少ない人同士で助け合っているため、保険制度として成り立たない「欠陥保険」です。

出産手当金を受ける方法

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国民健康保険には出産手当金はありません。

しかし、場合によっては、今現在、国民健康保険の加入者であっても、受け取れる可能性があるため、その方法を紹介します。

出産手当金を受けたいと思っている国保加入者の女性は次のいずれかに当てはまると思われます。

  • 無職
  • 自営業
  • 非正規社員(派遣・パート・アルバイト)
  • それで、これら3つのケースについて受け取る方法がないか解説していきましょう。

    1.無職の場合

    まず、無職の方については、「出産手当金」を受け取る方法は存在しません

    「出産手当金」は、そもそも「所得保障」の給付なので、労働をして収入を得ていなければ、例え制度として「出産手当金」があったとしても受け取ることは出来ません。

    2.自営業の場合

    次に自営業の方も、残念ながら「出産手当金」を受け取る方法はありません。

    しかし、1人ではなく家族で自営業を行っているのであれば、受け取れる方法があります。

    それは、法人化をして協会管掌健康保険に加入することです。

    例えば夫婦で事業をしている場合、夫を役員にして、妊娠している妻を従業員とするのです。

    妻には賃金を支払い、夫の扶養とせずに健康保険にも加入してもらいます。

    出産の近くになって、仕事ができなくなったら、賃金は支払いません。

    その代わりに、妻が「出産手当金」の申請を行うことで、受け取ることができます。

    ただし、会社の設立には費用も手間もかかる上に、場合によっては保険料が国保のときよりも高くなるケースも考えられます。

    出産手当金のためだけに会社を作るのは必ずしも「得」だとはいえませんので、まずは一度、税理士や社会保険労務士に相談してしましょう。

    3.非正規社員の場合

    非正規社員の方は、もし会社が健康保険組合に加入させる義務を怠っていた場合は、「出産手当金」を受け取ることができます。

    とくに中小・零細企業の場合、パートやアルバイトを会社の社会保険に加入させる義務があるにもかかわらず、実際には加入させていないケースが非常に多くあります

    なぜなら、パートやアルバイトを社会保険に加入させてしまうと会社の費用負担が増えてしまうからです。

    基本的に「株式会社」「有限会社」「合同会社」「財団法人」「NPO法人」などの法人で働いている人は、会社が加入している健康保険組合に入ることができます

    法人で働いていても「加入できない」人は、大まかに言って

  • 日雇労働者
  • 2ヵ月以内の期間だけ働く人
  • だけです。

    もし、一般的なオフィスワークや接客業などで、2か月を超えて法人に勤めているのであれば、まず間違いなく加入できます。
    (※夫の扶養に入っている人は夫の会社の保険組合に加入しています。)

    会社に健康保険組合への加入手続きをとるように伝えましょう。

    もし、会社が加入させないのであれば、最寄りのハローワークや年金事務所に電話をして公的な相談窓口を紹介してもらいましょう。

    社会保険に加入させない会社には罰則がありますので、泣き寝入りする必要はありません。

    また、すでに出産してしまった人も、出産時に雇用契約が続いている(退職していない)状態で、かつ出産から2年以内であれば、社会保険が遡って適用され出産手当金も受け取れる可能性があります。

    仮に出産を機に退職していたとしても、それが出産を理由に会社から退職を迫られていたことを証明できれば、不当な解雇であるとして、雇用契約の継続に加え社会保険についても遡って適用される可能性があります。

    このようなケースについてもハローワークや年金事務所で相談してみるとよいでしょう。

    なお、「日雇労働者」、「2ヵ月以内の期間だけ働く人」であっても、協会けんぽの日雇特例被保険者になることができます。

    年金事務所に行って手続きをすれば、なんと出産手当金も受けとることができます

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